誰にも言えない思いがけない妊娠をしたあなたへ
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ここでは、フランスの貧困支援について、妊娠出産から学生時代の経済的支援、若者支援、子育て支援などを詳しく解説する。
(写真1:家族手当基金ホームページより引用)
体外受精、妊娠検診、出産費用無料。
保育は生後2ヶ月半から保育園、有資格者が自宅で2-3人預かる保育アシスタント、ベビーシッターの中からライフスタイルに合うものを両親の収入の1割の利用料で使える。(介護保険を全労働者が負担するように、家族保険を全労働者+雇用主が負担し社会保険料収入が日本の約二倍確保できている)
国家資格である社会家庭専門員(家事支援+家族支援+ソーシャルワーク)を健康保険で利用できる。週数回、数時間ずつ家事育児の手伝いを利用できる。個人的に頼むヘルパーは税金控除の対象となり、全員加入が義務づけられている保険からもヘルパー費用が出ることがある。
単身家庭や病気や障害、仕事に波が大きい場合に、平日は里親、金曜夜から日曜夜まで自宅で育てるなどの利用も増えている。
3歳から16歳まで義務教育無料、高校無料、専門学校も無料のもの多数。
中学から家庭の収入に応じた返済不要の奨学金が出る。
習い事、家族旅行代など健康保険から支給。「困難のある子どもにこそ多くのチャンスを」
学校のソーシャルワーカーは学校に行く運動靴やコートやスポーツで使うものの費用を支給。
高校職業コースが充実しており18歳で手に職をつけて経済的に自立できる。
入学金もないので、高校も専門学校も大学も何度でも入り直せる、給料をもらいながら通う制度もある。
大学は家庭の収入が多い場合学費年間3万円。
受験がない、塾がない、偏差値も高校大学ランクもない。
無料で子どもを産み育て、子どもが望む教育を受けさせることができる。
「子どもの貧困」「親ガチャ」が起きないようにしている。親が失業しても子どもへの影響を少なく。
チャンスの平等をはかっている、やり直しができる。
経済的自立が日本よりしやすい。
若者向けマンションが全国にあり家賃約4万円(低収入の場合2万円)で住むことができる。一階にソーシャルワーカーがいる。
若者向け職安で月6万6000円の生活費就職活動費 ソーシャルワーカーや心理士もいて暮らしを総合的にサポート。
学生になるときに家族手当基金に手続きし約2万円の家賃補助を受け取るのが一般的な方法なので、福祉の利用に対しレッテルを感じるような考え方はない。
生活保護は個人単位。実家にいながら、同棲しながら自分だけ生活保護を受けることもできる。 家庭訪問や銀行照会はしない。 生活保護か自分で耐えるかの二択ではなく、5万円の所得には4万円の活動奨励金が支給されて生活保護より多い9万円手元に入るなどなだらかな構成になっている。
(画像1:生活保護の捕捉率の国際比較 ※生活保護問題対策全国会議(2011)より引用)
家族に他の家族の経済的負担を担わせないのは孤立を防止するため。
子の経済的自立の心配をしないで済むことで親子関係の葛藤のもとを取り除き、子には早期にソーシャルワークを届けることができる。
生活保護は64歳まで。基礎年金をもらうので老後の蓄えが不要。
病気(がん治療、うつ病など)や障害も手当の方が高額なので生活保護の対象ではない。
リスクに備えるという考えをしないで良い。
(日本では生活保護の高齢世帯の割合が55.1%、65歳以上の世帯の貧困率は27%)
コロナ禍も仕事ができない期間は給与の83%-100%を国が補償、経営が制限された企業も補償。
コロナ禍のキャリアアップ研修費用は1人年12万円まで国が出す。
アルバイト制度がないのでシフトが減ったりなくなることはない。1日雇用するだけでも社会保障費を雇用主は払う。
児童相談所は子どもソーシャル支援という名称で、勉強机代、言語聴覚士代、発音矯正士代などを出す。母国の親族に会いに帰るための飛行機代や、子どもにとって適した学校が私立の場合は私立校の費用を出すこともある。
申請制度ではない。
どこかしらのソーシャルワーカーにつながれば「権利へアクセスできているか」確認される。
全国共通の生活保護や手当を統括する窓口と自治体単位の経済的支援を担当する窓口の2つしかないので、ソーシャルワーカーが手続きを手伝う。ソフトウェア上でその家族が何につながっていて何が足りていないか見ることができるので、初日から連携することができ、不足の見落としを防ぐことができる。
世界人権宣言(1948年)25条 「妊娠期と子ども時代は特別な支援を必要とする(La maternité et l‘enfance ont droit à une aide et à une assistance spéciales)」とフランス語ではされている。英語は(Motherhood and childhood)であり、妊娠中も含む表記である。
滞在許可や健康保険証がなくても診察を受けることができ、胎児と子どもはフランス人の子どもと同等の権利が保障される。母については手続きが済むまで利用できない手当もあるが、子どもの福祉のために住居や生活費の手当が支給される。
滞在許可のない女性専用の婦人科検診や妊娠中の健診を行う市立病院もパリの中心部にある。
家事育児を支える社会家庭専門員だけでなく、より複合的なコーディネートと教育支援が必要な場合は在宅教育支援がおこなわれる。「複数で子どもを育てる」という表現がされる。親に障害や病気があったりフランス語を話さなかったりしても、子どもに不利がないよう親としての実践を支える。
(画像2:複数で子どもを育てる)
暮らしの中で毎日専門職が家族に接することで親に病気や障害があっても、子どもが家庭で暮らすことができる。
安發明子「フランスの福祉事務所と生活保護 – 日本との比較から- 」『自治と分権』2022年夏号 N.88、pp.71-86
安發明子「フランスのソーシャルワーク(6) フランスの在宅支援を中心とした子育て政策」『対人援助学マガジン』第 51 号 2022 年 12 月