誰にも言えない思いがけない妊娠をしたあなたへ
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ここでは、韓国の妊娠期支援について、短期間入所保護から自立支援、養育支援を解説する。
・1961年に制定された「淪落(りんらく)行為防止法」に基づき、「婦人保護事業」の一環として未婚母支援が行われる。
・1980年代~「婦人保護事業」が細分化され、未婚母保護施設は1986年には10か所になる。ただし、子どもは養子縁組を通して保護され、実親に対しては産前、産後の施設保護および医療サービス、分娩費補助に限られていた。
・1989年「母子福祉法」制定~婦女保護事業の一環としてなされていた「未婚母施設」も母子福祉法の対象となる。未婚の女性が妊娠・出産期に安全に分娩し、心身の状態が回復するまで一定期間入所できる施設として明文化される。
(グラフ1:未婚母施設(未婚母子施設)の推移)
(表1:未婚母を対象とした主な施設とサービス内容)
〇「危機的妊娠をした未婚母、父子の出産、教育、自立、養育、支援のためのone stop network サービス」を掲げて支援している社会福祉法人。大韓イエス教長老会総会韓国社会福祉財団が運営している。
〇支援の特徴~実践を制度作りに結び付ける。代表的な例~養育支援・自立支援と学業支援
・養育支援・自立支援
‐2001年に共同募金会の支援を受け、「未婚養育母子ステップハウス」をスタート。全国から受け入れを開始。
‐2002年に行政機関、未婚母関連施設、マスメディアなどの関係者を招いて「未婚養育母子家族国家支援を求めるためのセミナー」を開催
‐2003年から子どもを自分で育てる未婚母のための施設に国からの支援が始まる
・青少年の学業支援
‐妊娠を理由に自主退学に追い込まれるような状況の中で、2010年に、高校3年生のカップルを支援を機に大きく変化。このカップルは卒業後に結婚する予定でいたが、女子生徒のほうが退学させられそうになり、当事者と愛蘭院が一緒に国家人権員会に訴える。その結果、国家人権委員会は事実を調査し、教育科学技術省、女性家族省、保健福祉省長官および各市道教育庁の教育監に対して「青少年未婚母が教育を受ける権利を保障することは社会的課題であり、妊娠とともに学校を自主退学する事態は避けなければならない。青少年の未婚母の学習権を保障するために関連法律の整備を行うようにすべきである」との勧告を行う (国家人権委員会報道資料2010.8.30)。結果的に、女子生徒は退学を免れることとなる。
‐国家人権委員会と未婚母子施設、研究者が協力して、未婚母子施設にいる入所者を対象に、学業支援についての調査を行った。その結果、現在のように未婚母子施設に代案学校(フリースクール)を作るという学業支援の形が出来上がる。2022年12月末現在全国に15か所の学校があり、そのほとんどは未婚母子施設で運営している。学校長の推薦によって入ることができ、学習の面のみならず自立に備えるという内容も含めたカリキュラムになっている。委託という形になっていて、フリースクールで取った単位は在籍校の単位として認められ、卒業時も在籍校の卒業証明書を取得することができる。
(図1:愛蘭院のワンストップサービス)
Q.ナレ代案学校に通うようになったきっかけはなんですか?
A.妊娠して自主退学をするか悩んでいたのですが、母親に学校やめたくないと相談し、母がインターネットで愛蘭院という施設を見つけてすぐに入所相談し入りました。施設の中に学校があり、子どもを育てながら通えると聞いたのですぐ学校に通い始めました。
Q.ナレ代案学校を通して助かっているのはどんなところでしょうか?
A.子どもを育てながら通えますし、進路についてもいろんなプログラムで学べるのでよかったです。
Q.ナレ代案学校ので生活しながら感じた点はなんですか?
A.子どもを育てながら通えるところが本当に良くて、勉強も集中できて成績も上がり、前より勉強に興味を持つようになりました。また、勉強だけではなくゲームを活用するなど、オーダーメード式で教えてくれるところが良いです。
・ NGO LINKER :青少年未婚母支援を専門とする。韓国は徴兵制があるが、扶養義務者が3人以上の場合、徴兵が免除される制度を悪用し、男性が妻子を残して逃げてしまう場合がある。そのような場合は、婚姻歴があることにより、未婚母支援の対象になれず、制度の狭間に置かれてしまう。この団体が得意とするのは福祉サービスを作り出すことで、医療面では連携先の病院を開拓し、全国の大手の病院12カ所と連携するところまでこぎ着けた。健診、分娩、産後ケア、送迎などの支援を無償で提供している。自立支援としてはフリースクールを立ち上げ、高卒検定試験に加えて、バリスタ、エステ、ネイルアート、アロマなどの職業訓練を行っている
・Love the World(非営利団体):とくに30代以降の危機的妊娠をした女性支援を行う。産婦人科、関係機関との連携。住民登録抹消状態の解消により、公的支援サービスへつながるようにする隙間支援を行っている
・韓国危機妊娠出産支援センターが発足し、2019年5月「危機妊娠緊急電話1422-37」が全国統一番号で始まった。11か所の未婚母子施設が協力して電話の受信から支援まで行う体制が整う。
・この緊急電話の仕組み~KTという大手の通信会社と協定を結び、全国共通ダイヤルに電話すると発信先から住所が割り当てられ、担当の施設が電話を受けるというシステム。協力施設はあらかじめ全国を17区域に分けていて、各施設が1区域ずつ担当する。
・未婚母子施設の入所対象
2019年以前:未婚妊産婦、離婚、死別した妊産婦
2020年:DVを受けている既婚者へ拡大
2021年:未就学児と一緒に入所できるように
しかし、今もなお婚姻関係に基づき、シングルの場合だけ公的支援対象となっている
・この支援センターは、公的支援対象外の場合でも、すべての危機的な妊娠をした女性支援への拡大した点に大きな意義がある。
・2019年から2021年まで、本センターで支援した事例628人ケースの中で、外国人妊婦が272人で約43%を占める状況である。
姜恩和「予期せぬ妊娠をしたすべての女性への支援」『見えない妊娠クライシス』かもがわ出版、2021年、98-120頁。
姜恩和「韓国のベビーボックスに関する一考察―相談機能と匿名性の共存が示す子ども家庭福祉の課題―」『子ども虐待の克服をめざして 吉田恒雄先生古希記念論文集』尚学社、2022年、209-222頁。
愛蘭院(2022.3)『外国人妊産婦子の妊娠出産関連政策討論会資料集』
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