誰にも言えない思いがけない妊娠をしたあなたへ
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ここでは、フランスの養子縁組制度について詳しく解説する。
養子縁組可能な子どもが明確!
完全養子縁組可能な子どものステータス:国の子(pupilles de l’Etat国が後見人となる子ども)
国の子年間総計3888人、新規1260人、養子縁組952人(34%)(2017)
1歳未満は19%、平均年齢6歳。
他の子どもは80%が里親宅、残りは寮など
国の子の内訳:
(グラフ1:国の子ども内訳)
42%・・・親権維持努力不足による司法判断
=施設や里親に保護されている子どもの9割が裁判所の決定で保護されており、1年おきに状況確認される。
社会的養護の子どものステータスを確認する専門機関がある。養子縁組可能か検討する。
31%・・・匿名出産または公的機関で発見された子ども
匿名出産で生まれた子どもの99%は国の子ではなくなっている。82%は養子縁組成立、15%強は実親が2ヶ月以内に認知。特別な事情のない子どもは約2,7ヶ月で養親のもとに移動している。
11%・・・児童相談所に親によって託された子ども
親自身が養子縁組に同意した場合。
9%・・・孤児
7%・・・親権剥奪の司法判断
実親が家庭内で殺人をした場合など。
*「児童相談所に預けられた子どもの状況を調査検討する学際的、複数機関横断的委員会」
CESSEC (La Commission d’Evaluation de la situation et du statut des enfants confiés, CASF Art.L.223-1)
1年以上親と連絡がとれない、親が面会や裁判に来ない場合や、子どもの必要としていることに応えない場合に、親権を剥奪し養子縁組できるよう準備する専門機関。全ての社会的養護の子どもの状況を確認する。2016年の法律以降300人の子どもについて親権喪失と養子縁組が可能になる手続きがされた(2020年末時点)。ただし、子どもは養子縁組を希望するとは限らず、親権者がいないままでいる子どもも多い。
無関心、親として放置(Désintérêt, Delaissement parentale)という言葉が使われるようになり、諦める、放棄(Abandon de l’enfant)という言葉は使われなくなった。
1年間親と連絡が取れない場合や、積極的な姿勢を見せない場合が対象となるので、1年音沙汰がないという場合は対象になるが、8ヶ月の赤ちゃんはまだ1年経っていないので待つ必要がある。裁判所に連絡をして、裁判官が検討の手続きを進める。(CASF Art. D. 223-26)
家族評議会が養親候補を選ぶ 。(議員2人、元養子2人、福祉分野研究者2人、医者、養子当事者団体代表)
養子縁組可能な子どものプロフィールをもとに承認を得ている候補者から優先順位をつけ3つファイルを選ぶ。
子どもを預かっている機関が1番目の候補者に連絡をする。
里親宅に子どもがいる場合は最初里親に養子縁組を希望するか確認する。
里親団体へのヒアリングによると、
里親は実子がいる家庭が大半で、里親が小さい子どもを養子縁組することは良しとされていないため滅多にないとのこと。これまでずっと育ててきた8-10歳以上の子どもの場合は子どもと話し合って養子縁組することもあるが、子ども自身が国の子のまま里親宅で育つことを希望することの方が多い。
匿名出産の子どもは実親が認知する猶予期間2ヶ月の間パリ市では専門職が揃っている乳児院(平均3-5人の0-3歳児の小ユニット)で子どものニーズの見極めをする。匿名出産の赤ちゃんを受け入れる専門の訓練を受けている里親がいる県もある。
専門職の見極めの上で子どものニーズに一番応えられる養親候補が選ばれる。
養親候補は承認を得た後も積極的に養子縁組当事者団体のセミナーに参加したり、障害や病気にも対応する判断ができるため専門医との面会を重ねワーカーに報告したり、PR活動を継続する必要がある。
パリ市の登録養親数は1万3000。うち1400が委託成立。
赤ちゃんを受け入れられる条件は45歳未満であること。
子どもが委託される養親の平均年齢は41歳。
国内養子縁組=匿名出産で生まれた赤ちゃん500人、社会的養護出身の子ども100人
(親権維持努力不足による司法判断が増えている分、養子縁組を望むとは限らない子どもが増えている)
国際養子縁組421件(2019年)(滞在費など約130万円)
(承認を得ても、3割にのぼる単身者や、同性カップルは国内での縁組は難しい。
2018年に国際養子縁組でフランスに来た615人の子供のうち68%が一つ以上の特別な支援を必要とする子どもである(5歳以上45.5%、兄妹一緒26%、病気の子19.8%) 国を超えた養子縁組が世界的に減るなかで、特別な支援を必要とする子どもの受け入れ割合が高まっている)
(画像1:パリ市養子縁組機関冊子)
公的機関のみで養親候補の承認。質が担保でき、無料。
1ヶ所で承認を得たら全国で共通。5年間有効。
独立した機関が養子縁組を担当(民間はほぼない)。パリ市はパリ市養子縁組機関。
全国で2万5000養親候補承認を受けて待っている。
パリ市の養子縁組機関は職員が35人(ワーカー9人、心理士3人他は事務)。
養親希望者のうち承認成立14%。承認までのプロセスは最短9ヶ月。
採用の際確認される内容:
– 採用で見ているのは実親が子どもを手放す状況についての理解。子どもの歴史を一緒に支える覚悟があるか。
– 承認を得るのに3つ答えを出す。
1 肌の色 (自分と全く違う色でも良いか?)
2 病気と障害 (生涯自立して生活できない障害や病気でも受け入れられる?)
3 背負っている歴史 (重い歴史であったとしても受け入れられるか?)
これらに答えを出すために専門医に会いに行ったり、映画や本をもとにワーカーと話し合ったりする。
半年間は養子縁組事務所と、それまでいた乳児院や里親支援機関のフォローがある。半年後の裁判で養子縁組が成立したらフォローは終了する。一般の親子として暮らす権利を保証するため。
赤ちゃんには産科から乳児院への移動、養親候補との面会、養親宅への移動など逐一心理士が言葉を選び、丁寧に説明される。
社会的養護分野ではない一般のサービスを受けることになる。
出自に関する情報を子どもが求めた場合は養子縁組事務所が対応する。養子縁組した元子ども全体の5%しか出自に関する問い合わせをしないことがわかっている。その中には心理士の対応の中で取り下げる人も少なくない。自身が現在抱えている問題を解決するために情報を求めるため、心理士が対応する。心理士とのやりとりの中で情報へのアクセスが必要なくなる人も多くいる。未成年の場合は養親付き添いが必要だが、18歳になると自身で手続きし、CNAOPで保管されている出自に関するファイルにアクセスすることができる。
子どものニーズに応えられる養親が選ばれるように
– 養子縁組可能な子どものステータスが明確である。実親に会えないまま養子縁組もできない状況がないようにしている。
– 公的機関が統括して養親育成と登録をおこなう。
– 養親は最短で9ヶ月と時間をかけて社会的養護の子どもを育てることについて鍛えられる。祖父母も養親の会に参加したり映画上映会に参加するなどして準備する→出産時から、養子縁組までの過程で常に赤ちゃんには生みの親が育てられない状況であり養子縁組の手続きがされていることは説明されており、真実告知といった特別なタイミングを設けるのではなく常に本人に関する情報は説明される。
– 子どもに合った養親を選ぶ特別な組織家族評議会が置かれている。
– 出自に関して問い合わせをするのは5%にすぎない。それも、情報がただ欲しいのではなく、現在抱えている問題を解決するために情報へのアクセスを求めているので、心理士が問題の解決を支える。
安發 明子「フランスのソーシャルワーク(4)フランスの匿名出産、養子縁組、里親 – 『幸せな幼少時代を過ごし開花していくために』子どもにどのように親を与えるか」2021年6月第45号 pp.323-380
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