誰にも言えない思いがけない妊娠をしたあなたへ
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ここでは、フランスの匿名出産に関わるCNAOP(出自情報へのアクセスに関する国家諮問委員会)の詳細や出自を知る権利、実際に実親を探す子どもたちの状況について解説する。
CNAOP クナオプ Conseil National d’Accès aux Origines Personnelles
出自情報へのアクセスに関する国家諮問委員会
2002年設立
役割:
①匿名出産制度の運用の徹底
全ての産科、児童相談所が匿名出産を希望する女性に適切に対応できるよう統括する。
女性が匿名で出産を希望する際に、育てたい場合の支援方法を説明し、匿名出産制度の説明をし、子どもに必要な情報の説明と収集をし、情報を管理する。
②匿名出産で生まれた子どもの支援
匿名出産で生まれた子どもから出自に関する問い合わせの依頼があった際、情報提供し、希望があったら実母に連絡をとり母子間の調整をする。
公立私立全ての産科は匿名出産受け入れ義務。どこで産んでも同じサービスが受けられることが重要。
各県に2人いるCNAOP委員が24時間以内にかけつける。匿名出産を希望する場合は情報を収集してCNAOP本部に送り、保管。
CNAOP委員は現職の児童相談所か妊産婦幼児保護センター(保健所)の専門職の希望者から各県2人任命され、本部で研修を受け、CNAOPの各県での役割を遂行する。年に二回本部で継続研修を受ける。
CNAOPの体制と活動の状況 (2020年1月聞き取り)
法律家3人、心理士1人、事務3人
委員16名:法律家2人、関係省庁代表5人(社会、司法、内務、外務、海外領)、県議会代表2人、6つの民間団体代表(女性の権利保護、個人情報アクセス保護、養子縁組家族会、国の子団体)、専門家2人
年間問い合わせ400件。問い合わせをするのは匿名出産で生まれた子どもの5%にすぎない。
最初の問い合わせの1/4である年約100人が実親との再会を果たしている。半数弱は本人の取り下げなどで中断、 30%は情報不足で調査を中断、12%は親の拒否により調査中断。
CNAOPは病院、健康保険、社会保障給付、年金等にアクセスがあるため、名前と生年月日があれば現在の居場所を特定することができる。
再会支援は母親の居住地の児童相談所が協力することが多い。
父親に関する情報は少ないことが多く、主に母親が対象である。
①匿名出産を希望する女性に、希望すれば社会的支援によって子どもの養育環境を整えられることを説明する。
②匿名出産の制度を説明する。
③匿名出産をした子どもに情報を残すことが子どもにとって重要であるという説明をする。
「開かれたファイル」(必要に応じて閲覧が可能で個人情報を含まない。乳児院の担当者、養子縁組機関が見ることができる。養親にも内容が説明される。子どもが成人後希望する場合閲覧できる。)
- 赤ちゃんの生まれた場所と日にち、時間
- そのときつけた名前と名前をつけた人
父母両方について:
年齢、国籍と出身、身体的特徴(身長、目の色髪の色)、住んでいる地域、家族の状況近しい関係の家族、他に子どもがいる場合は年齢と性別、子どもに伝えたい情報、仕事と学校、健康に関する情報、誕生に関する状況 。(手紙、アクセサリー、プレゼント、写真等も希望により残すことができる)
「閉じたファイル」(子ども自身が希望したときにしか開くことができず、個人情報があったとしたら、このファイルを子どもに見せていいか問い合わせ時点で生みの親に確認の連絡をする。)
- 個人情報、その他
CNAOPが創立された2002年の法律を作成したMarie-Christine Le Boursicot 最高裁判所判事へのインタビュー
「1978年の法律で自身に関する行政書類の閲覧が可能になっても、養子にとって実親は実親の情報なのでアクセスできないことで異議申し立て、団体ができたことがCNAOP創設の契機となった。CNAOPができたことで母の権利と子の権利の間の争いはその後20年間起きていない。」
13歳までは養親が養子縁組機関(各県の公的機関)に相談をする。
13歳から17歳までは養親付き添いのもと本人が養子縁組機関に相談をすることができる。心理士が知りたい情報とその理由を聞き、現在抱えている疑問や問題の解決を支える。実際に実親にアクセスすることは稀である。
18歳以降は自身でCNAOPに問い合わせをすることができる。この場合もまずは心理士が話を聞く。それはただ出自を知りたいわけではなく、「解決したい問題」を抱えていてそれを解決するためにアクセスする場合が多いからであり、事務的に情報を渡せばいいわけではないとされている。閲覧も一緒にしてこの手続きが本人にとってプラスの経験となるようサポートする。心理士とのやりとりの中で半数は途中でアクセスをやめ取り下げる。
やはり実親を探すことを希望する人の半数は実親との再会が実現している。しかし、その後も継続的に連絡を取り合う人は少ない。
CNAOP職員か、実親居住地のCNAOP担当者が手紙を書いたり電話をかけて実親に説明する。半数の親は子どもの希望を伝えても個人情報の開示や再会を拒否する。
(画像1:WONDER BOY)
2019年にはフランスのファッションブランド「バルマン」のクリエイティブ・ディレクターを25歳のときから務めているデザイナーのオリビエ・ルスタンのドキュメンタリー映画が公開され話題を呼んだ。
タイトルは「誰も成功することなど想像しなかった子ども」という意味で本人がつけたが、成功するにつれなぜ匿名出産で生まれたのか、「実親を知りたい」「会いたいけど拒絶されるのが怖い」という葛藤の中 CNAOP に問い合わせをし、出自に関する資料を閲覧する。「産んでくれたおかげで存在することができ感謝している」と述べているものの、二度拒絶されることが怖くて結局実親には再会希望の連絡をしなかった。情報へアクセスする気持ちや、資料を閲覧し泣くシーンなど丁寧に心情を追いかけている。
(写真1:地方新聞で紹介される元養子たち ※地方新聞のインターネットページより引用)
地方紙には度々、実親を探す元養子たちの投稿が紹介される。
Contrôle des procédures d’adoption dans le département de Seine Maritime
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