誰にも言えない思いがけない妊娠をしたあなたへ

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日本の妊娠葛藤相談・女性の背景・居場所

 

 

ここでは、日本で妊娠に葛藤する女性の背景や、予期せぬ妊娠に至った場合の選択肢、日本の妊娠葛藤相談窓口(にんしんSOS)の現状と課題等について触れる。

 

 

妊娠に葛藤する女性の背景

 

予期せぬ妊娠に悩み葛藤する女性の背景については全国的に明確な統計はないが、生活困窮、家庭崩壊、孤立、若年、不倫、知的・精神障害等が、各にんしんSOSや養子縁組あっせん機関に多く寄せられるケースである。それらの背景が世代間連鎖していたり、複数の背景が混在したりするケースも多い。そして、そのほとんどのケースで男性に子どもの認知や経済面での責任追及がされないまま、女性だけが苦悩している状況を垣間見る。

 

親に知られたくない、学校や職場に知られたくないという心理から、医療機関や公的機関には相談しない女性が多く、匿名で相談できる民間サイドのにんしんSOSや養子縁組あっせん機関の役割は大きい。

 

厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」の第1次から第18次(令和2年度)までの0日死亡173人の出産場所は、自宅が73.2%で、医療機関は0であった。0日死亡となる実母の心理として、子どもを助けるよりも誰にも知られたくない心境であることが大きく、医療機関で出産した0か月以降の死亡例とは理由が異なる。(第15次報告参照)

 

大阪府の「未受診や飛込みによる出産等実態調査」では、令和3年の未受診・飛込み出産132件(昨年より60件減少)の背景は、「知識の⽋如」が25.7%と最多、次に「妊娠の事実の受容困難」、「妊娠に対する甘さ」「経済的問題」であった。

 

 

予期せぬ妊娠の選択肢

 

日本で困窮・孤立した状況で出産する場合、産科医療、産前産後の居場所、女性の自立支援、子どもの家庭養育といった多角的な支援が必要となるが、そのリソースはかなり地域差がある。つまり、現在いる場所、もしくは住所をおいている場所によって受けられる支援の内容やスピード感に差がある。また、高校に在学中と中退後では児童相談所や施設の対応も異なり、高校を辞めるほどの苦しさがあっても、支援の対象から外れていくという皮肉もある。妊娠して居場所を失った女性が、その日からすぐに落ち着ける居場所が全国どこでも確保されている訳ではないため、寝る場所を提供してくれる男性や性風俗の世界に足を踏み込みことを結果的に後押ししてしまっている現状は否めない。

 

女性は、基本的に氏名を明かして妊婦健診を受け出産、その女性か夫・元夫の戸籍に子どもの名前が記載される。自身で育てるか、育てないか、大まかに以下の選択肢がある。

1.経済的支援、育児支援を受けながら養育

 

妊娠・出産に関する経済的支援

 

 

※いずれも、自治体によって利用できるものに差がある。

 生活保護受給でない限り、制度を使っても自己負担が発生するものがほとんど。

 母子世帯の世帯収入は低く、産後は児童扶養手当や児童手当があっても、経済的理由により子どもを育てられないという女性は少なくない。

 

助産施設(R2年度)

 

全国で418施設、定員3425名。

 

 

妊娠?どうしよう お悩み別情報

2. 産前産後の居場所、母子生活支援施設に入所して養育

日本の妊娠葛藤相談・女性の背景・居場所

       (表1:妊娠期から自立までの居場所の可能性)

 

 

妊娠期から産後自立するまで安心して過ごせる居場所は、日本において喫緊の課題である。民間運営の居場所は、短期間の利用で部屋数が少なく、母子生活支援施設は単身妊婦の入所が難しい。また、一時保護で施設に入る場合は、DV被害者に倣いスマホ使用や外出の制限があることも多く、妊娠世代には快適な住環境とは言い難く拒否する場合も少なくない。

 

妊娠期からの居場所の確保のために、児童福祉系でも母子保健系でも国の財源がつくようになったが、都道府県も財源の捻出が必要であることから、自治体が捻出しなければ国の財源も出ず、地域差が生じている。

3.一時的に社会的養育下に子どもをおく(乳児院、養育里親)

 

しばらくは育てるのは無理!でもいつか自分で育てたい!

 4.特別養子縁組(養親夫婦に養育を託す選択)

 

産むしかない、産んであげたいけど育てるのは無理!

 

 

日本の妊娠葛藤相談

 

日本では、妊娠期からの相談対応の必要性が重視されるようになったものの、都道府県や政令指定都市・中核市ごと、もしくは人口あたりの妊娠葛藤相談窓口の設置は義務付けられていない。地元で生後0日目の虐待死亡や遺棄事件のニュースを見聞きする中、この課題に心を痛める自治体職員や法人が、それぞれ独自に立ち上げていったり、元々あった女性健康支援センター(現・性と健康相談センター)に上乗せして妊娠葛藤相談も受け付けたりするようになってきている。

 

妊娠をなかったことにしたい、誰にも知られたくない、自分では育てられないと苦悩している当事者に歩み寄るには、女性の健康・育児・性に関する「なんでも相談」ではなく、「にんしんSOS」のような独立した部門が妊娠葛藤相談に特化したホームページを立ち上げ、専門の相談員が日々対応することが効果的である。

 

妊娠葛藤相談の場面では、保健師・助産師としての医療・保健の知識が活かされることも多いが、当事者が困っている経済面、知られたくない心理や生い立ち、孤立、精神・知的・発達の課題等に対応することが必要となるため、医療・保健職なら自動的に妊娠葛藤相談の専門的な対応ができるようになるわけではない。妊娠葛藤相談事業にあたっては、社会福祉系の知識とスキル、生活困窮や孤立の背景の理解を含む様々な準備が必要となる。

 

相談員が自己研鑽しつつ、日々の相談対応の蓄積で専門性を向上していくためにも、当事者目線での迅速でクリエイティブなアプローチを開拓するためにも、この事業に関しては現在全国的に民間委託する傾向にある。定期的に人事異動があったり、夕方以降や休日対応、市町村を越えた対応、メールやSNSでの対応が難しい公的機関の直営方式は、当事者から見たハードルの高さに加え、専門性の蓄積という面でも難しさがある。

 

妊娠葛藤相談窓口:55か所(うち自治体直営は5か所)

※小規模な市民向けのものは除く。(2022.9現在。全妊ネットの基準によるカウント。)

※2020年10月から、日本財団の立ち上げ支援により、民間サイドのにんしんSOSの新規立ち上げが2年間で11か所と加速している。

 

養子縁組あっせん機関:23か所(2022.4現在)

 

相談件数:月に10数件~100件以上/機関まで(新規相談)

※全国的な実数把握は不可能。

 

相談内容:初期の妊娠不安から孤立出産の緊急対応まで様々

 

相談体制:助産師・保健師・社会福祉士等、専門職が電話、Eメール、LINEによる相談受付。

 

相談日数、時間帯、同行支援の有無等は、財源に大きく左右される現状がある。

 

相談の入口から、その先の産科受診、母子健康手帳発行、経済的支援、居場所の確保、育児支援、特別養子縁組等の医療・保健・福祉の受け皿へとつなぐ。

 

ドイツの妊娠葛藤の予防と解決するための法律では、相談に含まれる情報が以下のように定められており、相談員が持つべき知識の項目として参考になる。

 

  1. 1.性教育と避妊
  2. 2.子どもと家族のための援助

  3. 3.妊娠中の検査と出産の費用

  4. 4.妊婦のための社会的・経済的援助

  5. 5.障がい者とその家族のための助け

  6. 6.中絶を実行するための方法

  7. 7.中絶に伴う精神・身体的な結果とリスク

  8. 8.妊娠から生じる社会心理的な問題解決の援助

  9. 9.養子縁組に関する法的・心理的な側面

 

全国のにんしんSOS相談窓口

 

 

 

財源

 

民間サイドのにんしんSOSは増加傾向にあるが、自治体からの委託を受けられない限り存続の危機に陥りやすい。

 

現在、にんしんSOSの財源となるものは、大きく分けて以下である。

1.母子保健系

 

性と健康の相談センター事業の若年妊婦等支援強化加算

(積極的で機動力のある地域のNPO等に委託)2019年度~

 国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/2

2.児童福祉系

 

①産前産後母子支援事業

 

②特定妊婦等支援整備事業(整備費)2021年度補正予算~

(社会福祉法人やNPO に委託可)

 国2/3、都道府県等1/12、事業者1/4

 

③特定妊婦等支援臨時特例事業(運営費)

 国1/2、都道府県・指定都市・中核市・児相設置市1/2

 国1/2、都道府県1/4、市・福祉事務所設置町村1/4

3.助成金

 

申請して単発で受けられるもので、継続性の面では不安定であるが、自治体からの委託を行けられないスタート段階で大きな助けとなる。(日本財団の場合、20%は自己負担)

 

 

一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク 理事
一般社団法人ベアホープ 理事
助産師
赤尾 さく美

 

<他国の状況はこちら>

 

●韓国

 

韓国の妊娠期支援〜短期間入所保護から自立支援、養育支援へ〜

 

 

●フランス

 

フランスの妊娠葛藤と男性~子どもに2人の親を与える~

 

フランスの妊娠葛藤と匿名出産~母と子を守る~